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スパイダー・ノワール

おすすめ度
3.5 / 5

あらすじ

5年前に婚約者を失い引退した元スーパーヒーロー、ベン・ライリーが1930年代のニューヨークで私立探偵として生きながら、再び事件に巻き込まれていきます。全8話、Amazon Prime Videoで2026年5月配信のドラマシリーズです。

ネタバレ無し

1930年代ニューヨークのノワール世界

本作はマーベル・コミックのキャラクター「スパイダーマン・ノワール」を原案に、1930年代のニューヨークを舞台にした実写ドラマシリーズです。スーパーヒーローものとハードボイルドな探偵ものを掛け合わせた構成で、禁酒法時代の退廃的な空気が全編を覆っています。本作はもともとモノクロで制作することが前提の作品で、セットや照明もモノクロ映像に最適化されており、モノクロ版とカラー版の2種類で配信されています。カラー版は1年にわたる再撮影で追加されたもので、本来の制作意図から言えばモノクロ版で観るのが正解だと思います。

ニコラス・ケイジのベン・ライリー

主演はニコラス・ケイジで、本作がテレビシリーズ初主演となります。演じるのは元スーパーヒーロー「ザ・スパイダー」のベン・ライリーで、現在は冴えない探偵事務所を細々と経営しています。くたびれた中年ヒーローという役どころで、ケイジの存在感と味のある演技がよく合っていました。ラモーン・モリスが演じる親友でジャーナリストのロビー・ロバートソンとのやり取りが軽妙で、全体の重い雰囲気をちょうどいいところで緩めてくれます。

スーパーヒーロードラマとしての異色感

本作はマーベル作品ですが、MCUとは切り離された独立した世界観で展開します。「スパイダーバース」とも接続していないため、マーベルの予備知識がなくても楽しめます。ショーランナーはオーレン・ウジェルとスティーヴ・ライトフット、第1・2話の監督は「フリーバッグ」や「キリング・イヴ」のハリー・ブラドベアが務めています。スーパーヒーロードラマというより探偵ドラマにスーパーパワーが混入した作品という感触で、アクションよりもドラマ部分に力点が置かれています。

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ベン・ライリーが抱える過去

5年前、ベンの婚約者ルビー・J・ウィリアムズが何者かに殺されたことがきっかけでザ・スパイダーとしての活動を止め、以降は後悔と虚無の中で生きてきた人物として描かれています。物語はナイトクラブ「アルコーヴ」の歌姫キャット・ハーディ(リー・ジュン・リー)からの依頼をきっかけに動き始め、調査を進めるにつれてベン自身の過去と絡まり合っていきます。キャット・ハーディは一見して自分の利益だけを考えているように振る舞いますが、その裏に複雑な事情を抱えており、謎めいた存在として機能していました。

シルバーメインとヴィランたち

メインのヴィランはブレンダン・グリーソン演じるシルバーメインで、ニューヨークの裏社会を仕切る老練な犯罪ボスです。配下にはジャック・ヒューストン演じるフリント・マルコ(サンドマン)やエイブラハム・ポポーラ演じるトゥームストーンといった能力者が控えており、単純な犯罪組織の話にとどまらず、第一次世界大戦時代の人体実験がその背後に絡んでいることが明らかになります。各ヴィランが個別に描かれながら最終的に一本の線でつながっていく構成になっています。

ロビー・ロバートソンという軸

ラモーン・モリス演じるロビー・ロバートソンは、原作コミックでは新聞社の編集者として知られる脇役ですが、本作では1930年代のニューヨークで黒人ジャーナリストとして活動するベンの親友として再解釈されています。人種差別が当たり前のように存在する時代の中でキャリアを築こうとするロビーの葛藤が、ベンの物語と並走する形で描かれており、作品に別の厚みを与えています。二人のバディとしての関係性が全体を通じた感情的な軸になっていました。

シーズン1の着地

ベンの過去、キャット・ハーディの秘密、組織の背後にある人体実験の真相が一本に収束していく構成で、8話かけて積み上げた伏線が回収されます。決着の仕方はヒーローものとしての爽快感よりも、ノワール的な後味の悪さを残した形になっており、本作のスタンスと一致していました。スパイダーマンを知っていると拾えるニュアンスもありますが、知らなくても十分楽しめる完結した物語になっています。

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