顔を捨てた男
あらすじ
神経線維腫症による容貌を抱えながら俳優を夢見るエドワードは、実験的治療で念願の新しい顔を手に入れるが、かつての自分に瓜二つの男オズワルドが現れたことで、自己同一性の崩壊という迷宮へと引きずり込まれていく。
ネタバレ無し
どんな作品?
A24製作の2024年作品。神経線維腫症(顔に腫瘍が生じる疾患)で俳優を夢見ていた男が、実験的手術で「普通の顔」を手に入れてからおかしくなっていく話です。スリラーの形を取っていますが、「外見を変えれば自分も変われる」という思い込みへの疑問が根底にあります。
主演はセバスチャン・スタン(マーベルのバッキー役)で、手術前に特殊メイクで義顔をつけて演じています。ベルリン国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞しました。
どんな雰囲気?
じわじわと不安になる、不条理なホラーです。普通の映画的なカタルシスはなくて、後から「あれはどういうことだったんだろう」と考え続ける映画です。16ミリフィルムで撮られた映像の粒状感が、現実と幻想の境界が曖昧になる感じとマッチしています。
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ネタバレ有り
手術で得たものと失ったもの
手術後にエドワードは名前をガイに変えて不動産業で成功しますが、俳優になるという夢はむしろ遠ざかります。「新しい顔になれば変われる」と思っていたのに、自分の本質は変わっていなかったというのが最初の皮肉です。
オズワルドの登場
そこに現れるのが、エドワードの手術前の顔と同じ神経線維腫症を持つ男オズワルド(アダム・ピアソンが演じていて、本人も実際に神経線維腫症)。オズワルドは顔を変えることなく、エドワードが欲しかったものすべてを持っています——俳優としての才能、周りの人間を惹きつけるカリスマ、イングリッドとの関係。
エドワードが外見を変えて得ようとしたものを、オズワルドは素顔で持っている。これで「外見さえ変われば」という前提が完全に崩れます。
自分の役を演じられない
イングリッドがエドワードの旧顔をモデルにした戯曲を書き、オズワルドが主役に選ばれます。「かつての自分の役を、今の自分は演じられない」という不条理が笑えるような笑えないような感じで、本作の核心はここだと思います。
