スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
あらすじ
スパイダーマンとして成長を続けるマイルス・モラレスが、各次元のスパイダーマンが集うスパイダー・ソサエティと衝突しながら、自分が「あってはならない存在」だという真実に直面する物語。
ネタバレ無し
前作を超えるアニメーションの多様性
前作の映像表現に驚かされた観客に対して、本作はさらに多くの次元を舞台にすることでアニメーションのバリエーションを一段と広げています。インド・ムンバイのユニバースに始まり、スパイダー・ソサエティが拠点とする未来都市ニュー・ヨーク2099の幾何学的な映像、そして作品の各パートがそれぞれ異なる美術様式で描かれており、全編を通じてスクリーンから目が離せない密度がありました。
ホアキン・ドス・サントスら3監督と主要キャスト
監督はホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソンの3人。マイルスを演じるシャメイク・ムーア、グウェン・ステイシーのヘイリー・スタインフェルドが引き続き主軸を担い、ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099役にオスカー・アイザック、スポット役にジェイソン・シュワルツマンが新たに加わっています。オスカー・アイザックの声の低く張り詰めた存在感は、ミゲル・オハラというキャラクターに必要な威圧感を与えていました。
スポットというヴィランの面白さ
最初は間の抜けた外見のヴィランとして登場するスポットが、次第に制御不能な存在へと変貌していく流れは、本作のサスペンスの核のひとつでした。前作のコライダー事故が彼の誕生に直結しているという設定によって、マイルス自身の行動の結果がヴィランを生んだという因果が作られており、単純な悪役以上の関係性になっていました。
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キャノン・イベントという残酷な概念
本作の中心的な問いは「スパイダーマンにとって必ず起きなければならない出来事がある」という概念です。各次元のスパイダーマンにはそれぞれ固有の悲劇的な出来事が定められており、それを変えようとすると宇宙そのものが崩壊するとミゲルは主張します。マイルスにとってこれが即座に現実の問題になるのは、父ジェファーソンがスポットの暴走の巻き添えで命を落とすという未来が「キャノン・イベント」として示されるためです。抽象的な多次元の理論が、マイルスの身近な存在への脅威として具体化する構成は巧みでした。
スパイダー・ソサエティとの対立
ミゲル・オハラはマルチバースの秩序を守るため、各次元のスパイダーマンを集めたスパイダー・ソサエティを組織しています。しかしそのソサエティが、父の死を変えようとするマイルスを「異常」として排除しようとする側に回るという展開は、仲間であるはずの存在との全面対立という状況を生み出しました。多数のスパイダーマンに囲まれながら一人で逃げ続けるシーンは映像的な見せ場であると同時に、マイルスの孤立を象徴する場面でもありました。
マイルスが「異常」である理由
マイルスを噛んだクモは本来、別の次元(アース42)に存在していたものでした。そのためマイルスのユニバースには本来スパイダーマンが生まれるはずではなく、マイルス自身が「あってはならない存在」というキャノン・アノマリーだったという事実が明かされます。前作でスパイダーマンとして覚醒した彼の物語全体を揺るがす設定の反転でした。
アース42のマイルスとクリフハンガー
逃走の末に間違った次元(アース42)に飛んだマイルスは、スパイダーマンが存在しないその世界で捕らえられます。そこには別の道を歩んだマイルスが存在しており、本作はその対面の場面のまま続編に委ねる形で幕を閉じます。この大きく開いたままの問いを持ち越す終わり方は、シリーズとして見た時の期待感を最大化する一方、単体の映画として見ると途中で終わる不満が残る構成でもありました。
