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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー

あらすじ

ティ・チャラの死を受け悲しみに包まれたワカンダが、深海帝国タロカンの王ネイモアと対峙しながら、新たなブラックパンサーの誕生を模索する物語。

ネタバレ無し

追悼映画として

前作主演のチャドウィック・ボーズマンが2020年に他界したことを受け、本作はティ・チャラをデジタル蘇生させる道を選ばず、劇中でも「王の死」を正面から描きました。映画序盤から漂う深い悲しみは、スクリーンの内外に通底するもので、見ていてそれが伝わってきます。追悼映画としての重みを持ちながら、新しい物語をきちんと立ち上げようとしている一作でした。

続投キャストとネイモアという新たな存在

監督はライアン・クーグラーが引き続き担当。レティーシャ・ライト(シュリ)、ルピタ・ニョンゴ(ナキア)、ダナイ・グリラ(オコエ)、アンジェラ・バセット(ラモンダ)らが再び登場します。新キャラクターとして、深海帝国タロカンの王ネイモアを演じるテノッチ・ウエルタの存在感が際立っています。リリ・ウィリアムズ/アイアンハート役のドミニク・ソーンも印象的で、今後のMCUへの足がかりとなる登場でした。

タロカンという異文明の美しさ

本作の「敵」はネイモアが率いる深海帝国タロカンです。単純な侵略者ではなく、タロカンにはタロカン独自の歴史と正義があり、ワカンダとの対立が善悪の二項対立に収まらないのが見応えのある点です。水中で栄える独自の文明の映像は美しく、前作のワカンダとはまた異なる文化的な重みを感じさせました。

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悲しみを怒りに変えていくシュリ

兄ティ・チャラを失い、さらに母ラモンダをも失ったシュリは、悲しみよりも怒りを原動力として突き進んでいきます。ハート型ハーブを合成し新たなブラックパンサーとなった彼女がアンセストラル・プレーンで向き合ったのは、ティ・チャラではなくキルモンガーでした。怒りに飲み込まれかけている自分への警告として機能するこの場面は、シュリの心がどれほど憎しみに近い場所にあったかを示していました。

ネイモアという鏡

ネイモアはタロカンの民を守るために地上の人間と戦おうとしており、その動機はかつてのキルモンガーとも重なる部分があります。強大な力と正当な怒りを持ちながら、方法の選択が違う。シュリとネイモアが終盤で対峙する構図は、ともに圧倒的な力と正当な悲しみを抱えた存在どうしの衝突であり、本作が描こうとしたテーマを象徴していました。

命を奪わなかった選択

シュリはネイモアを倒せる状況でありながら、命を奪う道を選びませんでした。怒りを乗り越えて別の選択をしたその瞬間は、前作でティ・チャラが示した「力を何のために使うか」という問いへの、本作なりの答えになっていました。キルモンガーと同じ場所まで落ちかけたシュリが、ティ・チャラとは違う道でそこから引き返す——という流れが、シュリというキャラクターの成長として胸に残りました。

ハイチで生きていたもう一人のティ・チャラ

物語の終盤、ナキアがハイチで育てていた息子の存在が明かされます。彼のハイチでの名はトゥサンですが、ワカンダの名はティ・チャラ。前作から続く王の名前が次の世代へと受け継がれるこの場面は、チャドウィック・ボーズマンへの、そしてティ・チャラというキャラクターへの、最も静かな形の追悼でした。

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