ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1
あらすじ
ホグワーツを離れ、保護者も魔法省の後ろ盾もない状況でヴォルデモートの分霊箱を探し続けるハリー、ロン、ハーマイオニーの逃亡と孤独を描く、シリーズ第7作前編。
ネタバレ無し
ホグワーツを離れた異色の逃亡劇
シリーズを通じてホグワーツを舞台の中心に置いてきた作品が、今作では一切学校に戻りません。ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が各地を転々としながら分霊箱を探す構成は、ロード・ムービーに近い肌触りです。今まで当たり前にあった教師、寮仲間、食堂といった「日常」が消え、3人だけで状況を判断しなければならない緊張感が作品を通底しています。
追い詰められていく世界と3人の変化
デス・イーターが魔法省を掌握し、マグル生まれの魔法使いへの弾圧が始まる、という社会の変容が今作のもうひとつの軸です。ヴォルデモートとの直接対決ではなく、静かに進む「世界の腐敗」を描く前半は、アクション映画的なカタルシスを意図的に排した作りになっています。分霊箱(ロケット)の呪いが3人の関係を少しずつ蝕んでいく描写が、後半への溜めとして機能していました。
デイヴィッド・イェーツが作り出す閉塞感
今作もデイヴィッド・イェーツが監督を務めています。荒野でのキャンプシーンや森の中の息詰まる逃亡劇など、開けた場所ほど孤立と不安が際立つ映像設計は、今作のトーンにうまく合っていました。アレクサンドル・デスプラが担当した音楽は、ジョン・ウィリアムズのテーマとは趣が異なり、不安と旅情が混ざった質感でシリーズとの違いを印象づけました。
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ネタバレ有り
魔法省への潜入とデス・イーターに支配された世界
魔法省に潜入してロケット(分霊箱)を奪還する場面は、今作前半の見せ場です。魔法省の内部がすでにヴォルデモートの支配下に置かれており、マグル生まれへの尋問が行われているという描写が、じわじわとした恐怖感を生んでいました。主人公3人が大人に変身して潜り込むというコミカルな仕掛けも、緊迫感の中の息抜きとして機能していました。
ロンの離脱と分霊箱の呪い
ロケットの呪いの影響を受けたロンが感情的になり、ハリーたちと一時的に別行動をとる展開は、3人組の中でいちばん「普通の人」であるロンの視点から描かれたシリーズ屈指の場面でした。ハリーとハーマイオニーへの嫉妬や焦りが分霊箱によって増幅されるという設定が、呪物の怖さをリアルに見せています。
ゴドリックの谷とナギニの罠
ハリーとハーマイオニーが両親の墓参りのためにゴドリックの谷を訪れる場面は、今作の中でも感情的に重い場面です。廃墟となったポッター家の前に立つハリーの表情が印象的でした。その直後にナギニが変身した存在に襲われる場面は、神聖な場所が罠に変わるという緊張感が鋭く、見ていてとても怖かったです。
マルフォイ邸とドビーの死
終盤、捕らえられたハリーたちがマルフォイ邸に連行される場面。そこからドビーが現れて救出を試みるも、ベラトリックスの呪文によって命を落とすシーンは、シリーズを通じて最も後を引く別れのひとつでした。第2作から続いてきたドビーへの愛着が、この場面の悲しさを倍増させていました。
