笑ふ男
あらすじ
17世紀イングランドを舞台に、貴族の子として生まれながら永遠に笑い続ける顔を刻み込まれた男グウィンプレインの宿命と愛を描く。ドイツ表現主義の演出家パウル・レニが1928年に世に問うた、映画史に刻まれるサイレント映画の傑作。
ネタバレ無し
どんな作品?
1928年製作のサイレント映画で、ヴィクトル・ユーゴーの小説が原作です。顔に永遠の笑みを刻まれた男グウィンプレインと、盲目の少女デアの愛を描きます。監督はドイツ表現主義を代表するパウル・レニ。
ジョーカーの元ネタと言われる作品でもあります。グウィンプレインの特殊メイクによる「笑い顔」が1940年代のバットマン・コミックのジョーカーのデザインに影響を与えたと言われています。
見た感じの雰囲気
サイレント映画ですが、映像の密度が高くてとても見ごたえがあります。薄暗い空間と大げさな影の使い方はドイツ表現主義ならではで、全編通じて不気味でゴシックな雰囲気。主演のコンラート・ファイトの顔が忘れられません。笑顔なのに悲しいという独特の表情が、ずっと頭に残ります。
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笑顔を刻まれた理由
グウィンプレインの顔に笑みを刻んだのは、彼の父である貴族を処刑した王権の命令です。権力が子供の体に刻んだ復讐。彼はその顔のまま、見世物小屋で暮らすことになります。強制された笑顔というのが、権力による暴力の象徴として機能していて、見ながらじわじわと嫌な気持ちになります。
デアの愛
盲目のデアはグウィンプレインの顔を見ることができません。だから彼の笑顔が「異形」であることを知らないまま愛しています。これが本作の核心で、外見ではなく存在そのものとして人を愛するとはどういうことか、というテーマです。シンプルなロマンスに見えて、かなり深いところを突いてきます。
貴族社会への帰還
後半でグウィンプレインの出自が明らかになり、貴族社会に引き込まれます。権力側に取り込まれる展開で、さっきまで彼を笑っていた人間たちが今度は利用しようとする。レニの映像で描かれる貴族院の場面が特に圧迫感があって印象的です。
