エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
あらすじ
中国系移民の普通のおばさんエヴリンはビジネスも家族関係もうまくいっておらず人生に混乱する毎日でした。そんなある日別の宇宙からやってきたという夫に出会い、マルチバースを救えるのはこのどん底状態のエヴリンのみだと告げられたのでした。
ネタバレ無し
どんな作品?
2022年公開、ダニエルズ監督のマルチバースSFコメディ。主人公はコインランドリーを経営する中国系移民のおばさんエヴリンです。税務署の問題、夫との冷え切った関係、娘との断絶寸前の関係と、何もかもうまくいっていない状態から話が始まります。そこに別の宇宙から来たという夫が現れ、「世界を救えるのはどん底のあなただけ」と告げられるというストーリーです。
目まぐるしくて感情的な作品
映像がとにかく速くて情報量が多く、ジャンルもアクション・SF・家族ドラマ・コメディが混ざっています。最初はついていくのが大変ですが、慣れると没入できます。ミシェル・ヨーの演技の幅と、キー・ホイ・クァンの長年のブランクを感じさせない演技が見どころです。
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ネタバレ有り
別の宇宙に繋がる「ヴァースジャンピング」
異なる宇宙の自分にアクセスするには「非常識な行為」をする必要があるという設定で、かなりシュールなギャグが続きます。ただその滑稽さの裏に「規範から外れることでしか別の自分に触れられない」という意味があって、コメディと哲学が同居する本作らしい設計です。
岩の宇宙のシーン
エヴリンとジョイが岩として存在しているだけの宇宙のシーンがあります。動きも声もなく字幕だけで感情が語られる静かな場面で、絶え間なく続く映像の洪水の中に突然訪れる静寂です。この場面が好きな人が多いのも納得で、母と娘の関係性がここで一番シンプルに伝わってきます。
ジョイの虚無主義とエヴリンの答え
ジョイはジョブ・トゥパキという形で現れ、「どの宇宙にも別の自分がいるなら今ここに意味はない」という虚無主義に行き着いています。エヴリンはその問いに論理で反論するのではなく、「それでも今ここにいるあなたを選ぶ」という行動で答えます。家族関係の修復で終わるという着地が、マルチバース映画でありながら一番スケールが小さくて一番胸に刺さる部分でした。
