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スパイダーマン:スパイダーバース

あらすじ

ブルックリンの高校生マイルス・モラレスがクモに噛まれてスパイダーマンの力に目覚め、次元の裂け目から集まった6人のスパイダーマンたちと共にキングピンの巨大コライダーを止めようとする物語。

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アニメーションそのものが革命だった

本作について語る上で映像表現を外すことはできません。コミックのハーフトーン印刷を模したドット、コマ割りのような視点移動、速度線やオノマトペの空間への埋め込み——アニメーションでありながら紙のコミックを読む感覚を映像として体験させるという試みは、見ていて本当に驚きがありました。各次元のスパイダーマンがそれぞれ異なる作画スタイルで描かれている点も、マルチバースという設定と表現が一致していて考え抜かれていると感じます。第91回アカデミー賞で長編アニメ部門を受賞した作品です。

ボブ・パーシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン監督と主要キャスト

3人の共同監督による本作は、声の出演も含めて豪華な顔ぶれです。主人公マイルス・モラレスをシャメイク・ムーア、疲れ気味の中年ピーター・B・パーカーをジェイク・ジョンソン、グウェン・ステイシーをヘイリー・スタインフェルドが演じています。ニコラス・ケイジのスパイダーマン・ノワール、ジョン・ムレイニーのスパイダー・ハム(豚のスパイダーマン)は本作ならではの存在感を放っていました。

「誰でもスパイダーマンになれる」というテーマ

本作の核にあるのは、スパイダーマンというキャラクターが特定の一人ではないというメッセージです。肌の色も、年齢も、性別も、次元も違う6人が同じマスクをつけているという設定が、ヒーローの普遍性を示す構造になっています。マイルスがスパイダーマンとして覚醒する終盤の場面は、このテーマの着地点として映像的にも演出的にも気持ちよく決まっていました。

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キングピンとコライダーの動機

本作のヴィランであるウィルソン・フィスク(キングピン)が巨大コライダーを建造した動機は、交通事故で亡くした妻と息子を別の次元から呼び戻すためというものでした。街全体を危険に晒す行為でありながら、その動機自体は喪失への切実な反応であり、ただの征服者として描かれていないことが本作のヴィランに深みを与えていました。

ピーター・B・パーカーという存在

本作のピーター・パーカーは、人生に疲れた中年として登場します。離婚して、太って、やる気をなくした状態で次元を越えてきた彼は、理想のヒーロー像からは程遠い。しかしマイルスの師匠として関わっていく中で、自分自身も何かを取り戻していく流れが、このキャラクターに独自の深みを与えていました。

アーロン伯父との関係

マイルスが憧れていた伯父アーロン(マハーシャラ・アリ)が、キングピンの手下プロウラーとして活動していたという事実は本作で最も重い場面に繋がります。正体がわかった後もマイルスを見逃すことを選んだアーロンの最後は、マイルスにとってもう一つの喪失であり、自分自身がスパイダーマンとして立つ動機に深く関わる場面でした。

次元を超えた「受け渡し」

オリジナルのスパイダーマン(この世界のピーター・パーカー)がコライダーを壊そうとして命を落とすところから本作は始まります。死者から若者へ、ベテランから新参者へと役割が受け渡されていくという構造が、本作全体を通じたスパイダーマンというキャラクターの継承の物語として機能していました。マイルスが最後に自分の言葉でスパイダーマンとして名乗る場面は、その受け渡しの完了を告げる場面でした。

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