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フランケンシュタイン

あらすじ

天才科学者ヴィクター・フランケンシュタインが命を創り出す実験に成功するが、生み出した怪物との因縁が双方の破滅へと向かう。メアリー・シェリーの古典小説をギレルモ・デル・トロが映画化。

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ゴシックの巨匠が描く「創造」の物語

ギレルモ・デル・トロ監督がNetflixで贈る、メアリー・シェリーの古典小説の映画化です。「パンズ・ラビリンス」や「シェイプ・オブ・ウォーター」で知られるデル・トロは、怪物と人間の境界線を描き続けてきた監督で、フランケンシュタインというテーマはまさに彼の作家性と重なる題材です。北極の氷に閉じ込められた船で発見された瀕死の男が語り始める物語という枠組みは、原作小説のオマージュでもあります。

オスカー・アイザックとジェイコブ・エロルディの対比

ヴィクター・フランケンシュタインをオスカー・アイザック(「エクス・マキナ」など)が演じ、彼の創り出したクリーチャーをジェイコブ・エロルディが体現しています。創造主と被創造物という関係性を、二人の対照的な存在感が際立たせています。ミア・ゴス、クリストフ・ヴァルツ、チャールズ・ダンスなど実力派が脇を固め、全編にわたって重厚な演技が楽しめます。

精巧な美術と音楽が作り出す19世紀の空気感

デル・トロ作品らしい作り込まれた美術と衣装が、19世紀ヨーロッパの退廃的な雰囲気を作り上げています。アレクサンドル・デスプラ(「シェイプ・オブ・ウォーター」)が手掛けた音楽も印象的で、ゴシックホラーとしての情感を高めています。アカデミー賞では衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞・美術賞を受賞しており、視覚的なクオリティの高さはお墨付きです。

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ヴィクターの傲慢さと代償

作品の核心にあるのは、命を生み出すことへの傲慢さとその代償です。ヴィクターは自分の知性と野心を信じて被験体に命を与えますが、クリーチャーを「怪物」として扱い、その苦しみに向き合おうとしません。自分が生み出した存在に対する責任から逃げ続けるヴィクターの姿は、単純な「悪役の科学者」ではなく、共感と嫌悪の間で揺れる複雑な人物として描かれていました。

クリーチャーの孤独と怒り

クリーチャーは生まれながらにして孤独な存在です。創造主に拒絶され、世界からも疎まれる彼の怒りと哀しみは、ジェイコブ・エロルディの身体表現とともに深く伝わってきます。デル・トロの視点では、怪物は外見ではなく行為によって定義されるという考え方が一貫していて、クリーチャーよりもヴィクターのほうがよほど残酷に見える瞬間が多くありました。

北極という終着地

物語は北極での破滅的な結末へと向かいます。ヴィクターとクリーチャーが互いを追い、氷の果てで対峙する展開は、原作が持つ「創造と破滅の連鎖」というテーマを忠実に映像化しています。創造主も被創造物も共に滅びへと向かうという結末は救いがないようでいて、デル・トロ特有の哀愁が漂い、後味は単なる絶望とは少し異なる余韻を残していました。

デル・トロの怪物観

この映画全体を通じて感じたのは、デル・トロが一貫して「怪物への共感」を描き続けてきた監督だということです。「パンズ・ラビリンス」でも「シェイプ・オブ・ウォーター」でも、怪物とされる存在こそが人間の本質を映す鏡でした。フランケンシュタインのクリーチャーも同様で、恐怖の対象というよりも、理解されなかった存在への哀悼として描かれているように感じました。

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